尾上菊之助という人 

昨日は、momenと映画三昧。
おいしいランチを食べたあと、中田秀夫監督の5年ぶりだという日本映画(私は初めて)「怪談」&トークライブへ。トークライブ出演者は東雅夫(司会)、京極夏彦平山夢明中田秀夫監督、尾上菊之助。女優さんがいないので、最初は華がないと思ったけれど、まったりモードのトークが楽しかった。でも撮影が1年前だったというので、そのときの心境とか聞かれても困るというのが本音だよね(笑)。http://cinematoday.jp/page/N0011060
この映画は三遊亭円朝の『真景累ヶ淵』が原作。最後の水辺のシーンは去年円朝祭で見た幽霊画を思い出した。
まるで“映画に携わった関係者全員が菊ちゃんの魅力にやられて作ってしまった”のがスクリーン全体から伝わってきた。菊ちゃんは存在そのものが美しい“和”。私も最初のシーン、煙草売りの口上でもうメロメロ。それはもう艶っぽいったらなかったわよ。あの口上は資料として残っているものが何もなかったので、監督と菊ちゃんで考えたものだというのでびっくり。とにかくどの女優さんもかすんじゃってた。
そして映像が美しい!!雨や雪、そして花、光と影の美しさにほぉーーーっとなる。怪談だからしかたないシーンも、ああいうのダメな私だけど、そのたびに目を瞑ればいいくらいのものだったし。
撮影秘話のなかでとても興味深かったのは光と影は江戸をちゃんと意識していたということ。谷崎潤一郎の光と影の世界(日本家屋の陰影の美しさをつづったという「陰翳礼讃」(いんえいらいさん)だったかな?→http://www.city.yokosuka.kanagawa.jp/speed/mypage/m-imajo/akari/akarimuseum/folder/akari2-21.html)を表したかったこと、音響もすごく丁寧に作られていたこと←雨が雪に変わるとき音がなくなるんだけど、それだけじゃなく空気が変わるその瞬間の音がちゃんと入っていたというので、もう一度そういうところを感じながら観てみたい。時代劇の効果音ってほとんど限られているので「あっこれはあの時代劇のあのシーンの音だ」ってわかってしまうらしいけれど、この怪談の効果音はすばらしいって京極さんが言ってらした。
でも、とくかく菊ちゃんがいい♪あの透明感が新吉を悪人にさせていないのよね。親子程年上の嫉妬深い女房に対しても、結局主導権をもっているのも新吉だけど悪く見えない。次から次へと関係を持って行く女性たちに対しても自然にそうなっちゃった感じなのに主導権を握るのは彼。しかも私は死んでしまった“豊志賀(黒木瞳)”以外の女性に対しての愛は感じられなかった・・それでもいいのよ、彼ならって女は思うんだろうな。そう、とてもきれいなので全然悪く思えない。悪いとしたら、あの美しさね。そして怖いのはユウレイではなく女・・映画の中の生きている女性にも怖さがしっかり出ていたわ〜(私も女だけどね)。
そうそう撮影監督の林淳一郎さんによると、出てくる書状(怖いよ)や「怪談」のタイトルは盲目の書道家の方が書いたものなんだって。すばらしい文字よ。